紛争の内容

会社員をしていた50代男性のAさんは、20年ほど前に突然母親が亡くなり、親族が経営していた会社の連帯保証人などになっていた関係などもあり、葬儀費用や会社の負債等を一気に返済しなければならない不運な状況に陥りました。自身の家族を養いつつ、負債を返済しながらの生活を10年以上にわたり続けていましたが、勤務先からの給与はあるものの、多額の借金返済と生活費の支払いを両立させるために、さらに借金をしては返しという状態が長年にわたっていたため、借金は増え続ける一方でした。
結局、先延ばしにし続けた借金返済は1000万円ほどになってしまい、どんなに生活費を節約しても、このような借金は一生返せないと思うに至り、弊所にご相談にいらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟などの経過

Aさんには勤続20年以上の安定した職場と、毎月40万円程度の給与がありました。自宅の不動産などがあったことから、自己破産ではなく個人再生手続をすることとし、打ち合わせを重ね、家計簿等必要書類を集めつつ、手続を進めていきました。

本事例の結末

受任通知発送後、特に債権者からの意見もなく、大口の債権者もいなかったことから、本件については小規模個人再生を選択することとし、裁判所に申し立てをしました。
債務の額が大きかったことから、個人再生委員が就くこととなりましたが、履行テストを重ねつつ、毎月の家計簿の見直し等を根気強く続けることができたため、債務額は大きかったものの、3年での再生計画の認可もいただくことができました。

本事例に学ぶこと

債務整理のご相談は、給与額が大きかったため、任意整理という選択肢も検討しましたが、やはり債務の額そして妻子を扶養することと並行して返済をすることを考えると、自己破産あるいは個人再生が現実的といえました。ご本人の経済的な信用へのダメージは、個人再生の方が破産よりも小さいとも考えられますが、ご本人の意思ややる気が不可欠なため、この点はご本人とよく協議をして手続選択をする必要があると感じました。

弁護士 相川 一ゑ