紛争の内容

Aさん夫婦は共働きで、6年程前に念願の一戸建てを購入しました(住宅ローンは夫Aさんの名義)。
最初は順調に住宅ローンを支払っていたのですが、保険や税金など住宅を維持するために想像以上のお金がかかるのと、Aさん自身が体調を崩して収入が減ったため、ローンの支払い・生活費を賄うために妻もカードで借入をしたり、食品などの日用品をショッピングで買うようになりました。
気付けば、Aさん名義の借金は600万円に、妻名義の借金も400万円近くに膨らんでおり、借りては返すの悪循環に陥ってしまいました。
なお、住宅ローンは支払いこそ遅れていないものの、まだ2,000万円近く残っている状態でした。

交渉・調停・訴訟などの経過

妻とともに、ご夫婦で相談にいらっしゃったAさん。
住宅はどうしても維持したいとの希望があり、また、ご自身の体調も何とか回復して以前のようにフルで働けるようになってきたので、Aさんは住宅ローン特則を利用した個人再生をすることになりました。また、妻も同時に破産をして、夫婦の収入をAさんの個人再生に振り向けることとしました。
Aさんは懸命に働き、妻も夫婦2人の債務整理のため毎月厳しい家計管理をして、弁護士に指導された余剰金額(再生手続において求められる弁済原資)を出していきました。

本事例の結末

再生計画が認可され、住宅ローン以外の債務は2割に圧縮(今後3年間で返済)。
夫婦の念願であった自宅を守ることができました。

本事例に学ぶこと

妻の方は破産して月々の返済をなくし、夫婦揃ってAさんの個人再生に注力したことが功を奏した事案でした。途中、Aさんが交通事故に遭って収入が減るなど、紆余曲折はありましたが、再生委員の監督のもと、毎月の履行テストをしっかりとこなし、履行可能性があることを裁判所に示すことができました。

弁護士 田中 智美