
※本記事は、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の「債務整理専門チーム」の弁護士が執筆しています。
皆様、こんにちは。グリーンリーフ法律事務所の弁護士です。自己破産で免責許可決定が確定すると、原則として、借金について法的な支払義務が免除されます。しかし、全ての債務が免責されるわけではありません。税金、社会保険料、養育費、罰金、一定の損害賠償などは、破産法上の「非免責債権」として、免責後も支払いが残る場合があります。
非免責債権を見落として「破産すれば全てゼロになる」と考えると、免責後の家計が成り立たなくなるおそれがあります。また、債権者一覧へ記載しなかった債務が残る場合もあります。本コラムでは、主な非免責債権、通常の借金との区別、免責後の支払方法、申立てでの注意点を説明します。
免責許可決定の効果と限界

個人の破産では、裁判所の免責許可決定が確定すると、破産手続による配当後に残った破産債権について、原則として責任を免れます。消費者金融、カードローン、クレジット利用代金、通常の銀行借入れなどは、一般に免責の対象となります。
もっとも、破産法は、政策的・社会的な理由から、免責の効果を及ぼさない債権を定めています。これが非免責債権です。非免責債権も破産申立ての債権者一覧へ記載しますが、免責後に残る点が通常の破産債権と異なります。
主な非免責債権

税金・地方税・社会保険料
所得税、住民税、固定資産税、自動車税、国民健康保険料、国民年金保険料などの公租公課は、自己破産によって免責されません。滞納処分として預金や給与が差し押さえられている場合、破産を申し立てただけで全ての徴収が終了するわけでもありません。
税金等の滞納がある場合には、税目、年度、元本、延滞金、差押えの有無を一覧にし、役所や年金事務所と分納を協議します。現在の収入では一括払いができないこと、他の債務を破産で整理することを説明し、免責後に継続可能な支払額を検討します。
罰金・科料・刑事訴訟費用など
罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金、過料など、国庫に納付すべき一定の請求権は免責されません。刑事事件で罰金を命じられている場合、自己破産をしても納付義務は残ります。交通違反の反則金等についても、法的性質を確認する必要があります。
納付が難しいからと放置すると、罰金について労役場留置等の問題が生じることがあります。刑事手続を担当した弁護士や検察庁の徴収担当へ相談し、納付方法を確認してください。破産手続だけで解決する問題ではありません。
養育費・婚姻費用・扶養義務
子どもの養育費、配偶者の婚姻費用、親族間の扶養義務に基づく請求権は、非免責債権とされています。未払分だけでなく、将来発生する養育費等についても、離婚協議書、調停調書、審判に従って支払う必要があります。
収入が大幅に減少し、現在の養育費額を支払えない場合は、自己判断で止めるのではなく、家庭裁判所へ養育費減額調停を申し立てることを検討します。自己破産は、養育費額を自動的に減額する手続ではありません。
故意による不法行為の損害賠償

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権は、免責されません。ここでいう「悪意」は、単なる不注意ではなく、積極的な害意を含むものとして解釈されます。詐欺、横領、意図的な財産侵害などで損害賠償責任を負っている場合に問題となります。
債権者が非免責債権だと主張していても、直ちに確定するわけではありません。行為の内容、判決や示談書の記載、故意の程度を検討します。破産裁判所が全ての実体関係を最終判断するとは限らず、免責後に別訴で争われることもあります。
生命・身体を害する重大な過失による損害賠償
故意または重大な過失によって人の生命または身体を害した不法行為に基づく損害賠償も、非免責債権です。飲酒運転や著しく危険な運転による人身事故などで問題となる可能性があります。物損だけの通常の過失事故とは区別して検討します。
自動車保険から賠償される部分がある場合でも、保険の対象外や求償の問題が残ることがあります。事故証明、刑事記録、判決、示談書、保険会社の支払資料を整理し、どの債務が残る可能性があるか確認します。
雇用関係の一定の請求権
雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権・預り金返還請求権(破産法253条1項5号)
破産者が使用者である場合、使用人の給料や預り金のうち一定のものは非免責債権とされています。個人事業主が従業員の給与を未払いにしたまま破産する場合などに問題となります。法人の債務と代表者個人の債務は区別しますが、個人事業では事業主本人が使用者です。
未払給与は労働者の生活に直結するため、破産手続上も優先的な扱いを受ける場合があります。従業員名、雇用期間、未払額、源泉徴収、立替経費を正確に一覧化し、賃金台帳等を保存してください。
故意に債権者一覧へ記載しなかった債務
破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権は、原則として免責の効果が及ばないことがあります。債権者が破産手続開始を知っていた場合などには例外がありますが、意図的な除外は避けなければなりません。
親族・友人からの借金、古い保証債務、係争中の請求、住所が不明な債権者も記載します。申立後に漏れが判明した場合は、直ちに弁護士と裁判所へ報告して追加します。「請求されていないから書かなくてよい」という理解は誤りです。
詐術による借入れは別の争いになることがあります
収入や勤務先を偽り、返済意思がないのに借入れをした場合、債権者が詐欺等を理由として、悪意の不法行為に基づく非免責債権であると主張することがあります。クレジットカード現金化や申立直前の高額利用でも同様の争いが生じ得ます。
ただし、返済が難しい状態で借りた債務が全て当然に非免責となるわけではありません。申込時の認識、説明内容、返済実績、資金使途を具体的に検討します。不利な事情がある場合も、利用履歴を隠さず弁護士へ伝えてください。
奨学金や教育ローンは原則として免責対象です

本人が借りた奨学金や教育ローンは、通常の金銭債務であり、原則として免責の対象です。ただし、親や親族が保証人になっている場合、本人の免責後も保証人へ請求が及びます。機関保証の場合には保証機関からの求償関係を確認します。
養育費と教育ローンは目的が似ていても法的性質が異なります。子どもの扶養義務としての養育費は非免責ですが、金融機関から借りた教育資金は一般の借入れとして扱われます。債権名だけでなく契約関係を確認します。
家賃・携帯料金・医療費など
破産申立前の滞納家賃、携帯料金、医療費、公共料金は、特別な事情がなければ一般の破産債権として免責の対象となります。一方、申立後に新たに発生する家賃や通信費は、現在の契約を維持するため支払う必要があります。
滞納家賃が免責対象でも、賃貸借契約の解除や明渡しの問題は別です。携帯端末の分割代金を免責対象にすると、通信契約の継続に影響することもあります。債務が消えるかと、サービスを使い続けられるかを分けて考えます。
非免責債権も債権者一覧へ記載します
税金や養育費が免責されないからといって、申立書に書かなくてよいわけではありません。全債務を把握し、債権者一覧や公租公課一覧等へ記載します。裁判所や管財人が負債全体と家計を確認するためにも必要です。
債権の法的性質に争いがある場合は、「非免責か不明」として経緯と資料を提出します。申立人が一方的に免責対象と決めるのではなく、判決、契約、事故内容などを基に判断します。
さいたま地方裁判所での養育費の取扱い

養育費については、破産手続開始時までに支払期が到来している未払分と、開始後に支払期が到来する将来分を区別する必要があります。未払養育費は、破産債権に当たる一方で、破産法253条により免責されないため、免責許可決定後も支払義務が残ります。
さいたま地方裁判所では、調停調書などにより将来の支払いが義務付けられている養育費で、破産手続開始時にまだ期限が到来していないものは、そもそも破産債権ではなく、開始後に得た給料などの新得財産に対する強制執行も可能とする考え方が示されています。したがって、破産申立てを理由に将来の養育費の支払いを停止することはできません。
収入減少や病気などにより、定められた養育費を今後支払うことが現実に困難な場合は、自己判断で減額するのではなく、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることを検討します。破産手続と家事事件は役割が異なるため、非免責債権を含む家計再建計画を同時に作る必要があります。
免責後の支払計画を作る

非免責債権が多い場合、免責を得ても直ちに家計が安定するとは限りません。税金、養育費、罰金などを月額いくら支払うか、住居費と生活費を含めた家計表を作ります。役所や相手方との分割協議も、破産申立てと並行して進めることがあります。
支払計画が現実的でない場合には、養育費減額調停、税の徴収猶予・分納相談など、債務の性質に応じた手続を検討します。非免責債権の存在は自己破産を諦める理由ではなく、免責対象の借金を整理して支払原資を確保する意味があります。
非免責債権が多い場合の手続選択

税金や養育費など非免責債権が負債の大部分を占める場合、自己破産をしても残る支払いが大きく、家計改善の効果が限定されることがあります。それでも、カードローン等を免責させることで、非免責債権へ充てる原資を確保できるなら、自己破産には十分な意味があります。
一方、安定収入があり、非免責債権と減額後の一般債務をともに返済できる場合は、個人再生や任意整理を比較します。個人再生でも税金や養育費が減額されるわけではありませんが、住宅を維持する必要性など、他の条件によって選択することがあります。
手続を決める際は、免責対象債務と非免責債務を分けた二つの一覧を作り、手続後の月額負担を試算します。非免責か争いがある損害賠償については、最悪の場合と免責される場合の双方で家計を検討すると、現実的な見通しを持てます。
相談から申立てまでに共通して大切なこと
免責後に残る支払いを正確に見通すには、相談時点で分かる事実を包み隠さず伝えることが出発点です。通帳や契約書が全部そろうまで相談を待つ必要はありませんが、借入先、財産、直前の返済や送金、家族との金銭関係をメモにしておくと、問題となる点を早く特定できます。後から資料が見つかった場合も、その都度追加して説明します。
弁護士へ依頼した後は、債権者への返済を止める一方、家賃、食費、医療費、税金など現在の生活に必要な支払いを整理し、毎月の家計を記録します。収入が入ったら、生活費、申立費用、予備費を分け、使途不明の出金を作らないようにします。家族へ送金する、高額な物を購入する、財産を売却する必要があるときは、実行前に確認してください。
自己破産の結果は、書類の形式だけでなく、申立人が財産と借入経緯を正確に説明し、裁判所や管財人の調査に誠実に協力できるかによって左右されます。都合の悪い事情を隠して一時的に申立てを簡単に見せるより、問題を最初から共有し、必要な是正や積立てを行う方が安全です。手続の目的は過去を責めることではなく、債権者との公平を確保しながら生活を再建することにあります。
まとめ

自己破産の免責は多くの借金に及びますが、税金等の公租公課、罰金、養育費・婚姻費用、一定の損害賠償、故意に債権者一覧へ記載しなかった債務などは、非免責債権として支払いが残る可能性があります。
債務の名称だけで決めず、発生原因、契約、判決等を確認し、全ての債務を申立書へ記載してください。免責後に残る金額を把握し、分納や家事調停等を組み合わせて、実行可能な生活再建計画を立てることが重要です。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。
この記事を書いた弁護士:弁護士 申 景秀
債務整理・法人破産
埼玉弁護士会所属。 獨協大学法科大学院を卒業し、司法試験を70番台という高順位で合格。札幌での司法修習を経て、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所に所属。
債務整理・借金問題案件に精通し、多数の解決実績を重ねている。任意整理、個人再生、自己破産、経営者保証ガイドラインの利用などの手続選択を相談者の状況に応じて分析し、依頼者の不安に寄り添い、経済的再生と平穏な生活を取り戻すため、専門知識を活かした迅速な解決を追求している。














