紛争の内容

定年後、嘱託で同じ会社に勤務を続けることになったAさんは、息子Bと同居し、家計を共にしていました。

AさんとBは二人暮らしでしたが、燃費がいい通勤用の車、出かける時の車、ということで3台もの車を所有し、カーローンを組んでいました。

カーローン自体は完済したものの、そのローンの支払いのために、キャッシングをしたりしていました。

娘Cに子どもが生まれ、孫が生まれた喜びから定年の時にもらっていた退職金の一部を娘Cに祝金で渡すなど、債務の返済に充てるべき金員を使いこむという事実もありました。

息子Bにも借金はありましたが、B自身の借金はBの収入で賄える程度ではあったため、Aさんは自分だけ個人再生をすることになったのです。

そこで、このような複雑な経緯があったAさんについて、裁判所はそもそも再生計画で支払うべき弁済額を、どのように設定すべきか、Aさんの財産や今後の弁済をしていけるのか、などを調べるため、当職を再生委員として選任しました。

交渉・調停・訴訟等の経過

Aさんの娘Cに対する祝金は、危機的状況にあって財産を流出したものとして見ざるを得なかったため、Aさんの財産として計上させることとし、清算価値基準に加えるようにしました。

また、Aさんの家計簿は、毎月赤字状態で、そのままでは到底最低限の再生計画に基づく弁済額も支払えないように思われました。

そこで、家計を見直してもらうほか、息子Bの借金が返済でき、家計全体が改善するであろう将来の目標を確認して、履行可能性があるかを見極めることとしました。

本事例の結末

Aさんのその後の家計状況、そしてBの借金返済計画を基にすれば、今後はAさんの家計も大幅な黒字化が見込まれるとして、Aさんには再生計画の認可が認められました。

本事例に学ぶこと

個人再生は、再生計画の履行可能性が何よりも重要です。

したがって、家計簿が黒字ではないということであれば、その時点で手続に支障が生じてしまいます。

とはいえ、再生計画の弁済期間中にきちんと弁済できる見込みが立つのであれば、履行可能性がないとまでは言えず、あとはその見込みがどれだけ確実か、という問題になるのだと感じました。

弁護士 相川 一ゑ