事案の概要
知人に誘われ、7年程前から競馬にのめりこむようになった、消費者金融等からの借入金を原資に馬券を購入していたが、当時は安定的な収入があったために返済ができていた、その後、体調不良により収入が減少してしまい返済が困難となったため、小規模個人再生手続の申立てをしたという事案でした。
住宅ローンはなかったものの、体調との兼ね合いで安定的な収入が確保できるかが問題視されたため、履行可能性の有無を検討することとなりました。
なお、申立時点で債権者の1社が債権総額の2分の1に近い債権を有しているという状態でした。

主な業務の内容
開始決定前に申立人と面談を行い、家計収支の確認を行いました。
その時点では申立人の体調に問題はなく、家計収支も返済原資を捻出できる状態でした。
過半数債権者が発生する可能性は残る状態でしたが、手続を進めることとなりました。

本事例の結末
手続開始後、債権者は小規模個人再生手続が開始された時点までの遅延損害金を債権として届け出ることができますが、今回、債権届出をしてきた債権者は債権総額の2分の1に近い債権を有している1社のみであり、債権届出のなされた遅延損害金を踏まえ債権総額を計算をしたところ、当該債権者の有する債権が債権総額の過半数を占める状態となっていることが判明しました。
債権総額の過半数を占める債権者が再生計画案に異議を述べた場合、再生計画は認可されず、小規模個人再生手続は廃止となります。
債権届出の段階では当該債権者の意向は明らかでなかったため、その後の手続を進めたところ、当該債権者が再生計画案に異議を述べたため、再生委員としては小規模個人再生手続廃止の意見を述べざるを得ず、今回の手続は廃止となりました。

本事例に学ぶこと
負債の原因が浪費的なものである場合、破産手続では免責不許可事由の問題が生じるため、個人再生手続の利用を検討することがあります。
個人再生手続は債権額を圧縮して返済計画を立てるという手続ですが、小規模個人再生手続では返済計画について債権者の同意を得る必要があります。
債権者の頭数の過半数、もしくは、債権額の過半数を有する債権者からの反対がない限り、再生計画案は認可されますが、いずれかの債権者から反対が出た場合には再生計画は認可されず、小規模個人再生手続は終了してしまいます。
申立時点から過半数債権者が存在し、当該債権者が返済計画に反対することが予想される場合には、返済計画に対する債権者の同意を要件としない給与所得者等再生手続を選択することを検討しますが、今回のケースのように手続を始めてみないとどちらに転ぶか分からない(他の債権者が遅延損害金を債権届出すれば過半数債権者は発生しませんでした)という場合の手続選択の判断は悩ましいところです。

弁護士 吉田竜二