依頼内容

Aさんとは、当初は別件の民事訴訟のみの受任でしたが,事件の背景事情を聴き取りしていると,10年以上前に,不動産担保ローン業者からの借入れがあり,当時所有していた土地を売却して返済したとの話がありました。
そこで,Aさんと改めて受任手続をして,その業者に取引履歴の開示を請求したところ,履歴はすでに廃棄済みとの回答しか得られませんでした。

しかしAさんは,基本契約書と完済したときの領収書を持っていました。そこで,Aさん本人からの聴き取りをもとに,最初の借入時から完済までの各返済額などを推定して取引履歴を作成したところ,過払元金だけで,1000万円以上もの過払となっていることが分かりました。


手続きの方針、結果

今回,この過払状態に気が付いたのが,完済から約9年たっていた時点だったため,早急に訴状を作成し,不当利得返還請求訴訟を提起しました。
なぜなら,取引最終日,つまり完済時から10年を経過すると,消滅時効が完成してしまい(最高裁平成21年1月22日判決),せっかくの過払金が水の泡となってしまうからです。

ただ,訴訟提起は,時効ぎりぎりでしたが,思わぬ利益もありました。それは,過払金に対する利息です。過払利息については,業者が「悪意の受益者」(民法704条)であるとして,年5分の利息が請求できることは実務上ほぼ間違いない状況にあり,Aさんの場合,完済から訴訟提起までのほぼ10年間分の利息が発生していました。実際に計算すると,過払利息だけで約500万円にも達していました。銀行に預けるより,はるかに高い利息が付いたわけです。

訴訟でも,業者側は,「みなし弁済」(貸金業法43条)などの主張を繰り返していましたが,それが認められるはずもなく,こちらの全面勝訴で終わりました。
ただ,判決となっても,業者がそう簡単に支払ってくれるはずもなく,業者と取引関係にある金融機関の口座を差し押さえて,回収に至りました。

完済してしまったからといって,諦めることなく,むしろ積極的に当時の資料を探したり記憶を呼び起こしたことが、思わぬよい結果となったケースでした。