
借金問題に苦しむ多くの方にとって、マイホームを手放さずに大幅な借金減額を目指せる個人再生は、生活再建のための強力な選択肢です。裁判所に再生計画が認められ、これでようやく人生をやり直せると安堵された方も多いのではないでしょうか。
しかし、人生には予期せぬトラブルがつきものです。再生計画に基づく返済期間は、原則として3年間(最長5年間)という長期にわたります。その長い道のりの途中で、手続きをした時点では想像もしていなかったような、以下のような事態に直面してしまうケースは決して珍しくありません。
・重い病気や大ケガを患い、長期の入院・療養を余儀なくされて働けなくなってしまった
・勤務先が突然倒産した、あるいは一方的なリストラに遭って収入が途絶えてしまった
このような不測の事態が起きると、どんなに計画を遵守しようという強い意志があっても、物理的に返済を継続することが不可能になってしまいます。
「せっかく個人再生をしたのに、返済が滞ったらすべてが水の泡になってしまうのではないか……」 「やはり自分には自己破産しか道はないのか。でも、そうなれば念願のマイホームを手放さなければならない……」
このように、一人で深い絶望や焦りを感じ、夜も眠れないほど悩まれている方もいらっしゃるかと思います。
しかし、諦めるのはまだ早いです。日本の民事再生法には、このように本人に全く落ち度がない正当な理由で、どうしても返済が続けられなくなったという極限状態に陥った方を救済するための特例措置が用意されています。それが「ハードシップ免責」という制度です。
本コラムでは、まず個人再生の概要や手続きについて解説したうえで、個人再生における「最終手段」とも言えるハードシップ免責について、その概要及び認められるための非常に厳しい4つの要件について、弁護士が分かりやすく解説します。
個人再生とは

個人再生とは、債務を圧縮する民事再生法に規定された手続きです。
将来において継続的に収入を得る見込みがあり、住宅ローンを除く債務の総額が5000万円以下である方が裁判所に申し立てることができます。
債務者が、裁判所に個人再生を申立て、再生計画案の認可を受け、債務の一定額を原則3年間(例外的に5年間とする場合もあります)かけて再生計画案に従い支払えば、それ以上の債務については支払う義務がなくなります。
個人再生のメリット

個人再生には以下のメリットがあります。
任意整理に比べて大幅な債務の圧縮が見込まれること
任意整理では債務の元本の大幅な減額は望めません。
しかし個人再生では、詳しくは後述しますが債務の元本含む総額が圧縮されます。
そのため個人再生では、債務の大幅な減額が見込まれます。
自宅を残せる可能性があること
個人再生の最大の特徴は、一定の要件はあるものの、個人再生を行っても、別途住宅ローンを支払い続け、自宅を残すことができることです。
自己破産手続きでは、原則として、持ち家含む財産は手放すことになってしまいますが、一方個人再生では自宅を残すことができるという点が非常に大きいメリットであるといえます。
資格制限や免責不許可事由がないこと
自己破産をすると、申し立てて開始決定が出た時点から、手続きが終了するまで、各種士業や警備員、保険外交員などの一定の職業に就くことができません。
しかし個人再生の場合は、そのような資格制限がありませんので、どのような職業の方でも問題なく利用できます。
また、自己破産では、たとえば借り入れの理由が浪費やギャンブルである等の一定の事由(免責不許可事由と言います)がある場合は、免責が認められないおそれがあります。
以上から、自宅を残したい方、資格制限を受けたくない方や自己破産では免責が見込まれない方は個人再生の利用の検討をおすすめします。
個人再生のデメリット

個人再生には、以下のデメリットがあります。
利用の条件が厳しいこと
個人再生は、利用の条件として、将来において継続的に収入を得る見込みがあることが必要であるため、現在継続的な収入がない方は利用することが難しくなっています。
官報へ掲載されること
個人再生をすると、官報(国が発行する機関紙です)に住所・氏名が掲載されます。
信用情報に傷がつく
個人再生をすると信用情報への事故情報が登録されてしまいます。信用情報に事故情報が登録されると、新しく借金をすることができなくなったり、クレジットカードを作ることができなくなったり、キャッシングの審査が非常に通りにくくなってしまうといった弊害が生じます。もっとも、事故情報は、永続的に登録され続けるわけではなく、個人再生の再生計画に従った返済の官僚からおよそ7年で削除され、その後は再びクレジットカードやキャッシングの審査に通るようになります。
債務の返済が一定期間遅れるだけでもブラックリストに載ってしまいますので、債務の返済に苦しんでいる方は、債務を放置するのではなく、一刻も早く債務整理を行い、経済的再スタートを図る方が望ましいといえます。
個人再生における免責とは

個人再生は、(※)最低弁済額基準と清算価値基準(給与所得者等再生の場合、可処分所得基準)の高い方の金額を原則3年間(最長5年間)で分割して支払う内容の再生計画を立てます。
そして、再生債務者が、再生計画に従った返済を完了した場合、減額された残りの債務については免責され、手続きが終了します。
一方で、再生債務者が再生計画の履行を怠ると、一定の資格を備えた再生債権者の申立てにより、裁判所は、再生計画の取り消しを決定することができます。取消決定が確定し、破産の原因たる事実がある場合は、裁判所は破産手続開始決定をすることができます。しかし、病気や勤務先の倒産等の再生債務者の力ではどうしようもない不測の事態によって、誠実に再生計画に従い返済を続けてきた再生債務者の努力が水の泡になるのは再生債務者にとってあまりに酷な結果となってしまいます。そこで民事再生法は、一定の要件を満たした場合に、免責の申立てを認めています。この制度のことをハードシップ免責といいます。
(※)最低弁済額基準
最低弁済額基準は以下の表のとおりです。
| 債務総額が100万円未満 | 全額(減額なし) |
| 債務総額が100万円以上500万円未満 | 100万円 |
| 債務総額が500万円以上1,500万円未満 | 債務総額の5分の1 |
| 債務総額が1,500万円以上3,000万円未満 | 300万円 |
| 債務総額が3,000万円以上5,000万円以下 | 債務総額の10分の1 |
(※)清算価値基準
債務者が一定の財産を所有しているような場合、自己破産をすると、その財産を換価し債権者に平等に分配することになります。一方で、そのような場合に、個人再生を選択し、最低弁済額基準の金額の返済を認めてしまうと、債権者の受け取る金額が、自己破産をする場合よりも個人再生をした場合の方が低くなってしまうことがあります。それでは、債権者があまりに不利な結果となってしまいます。
そこで、個人再生をしようとする人の所有する資産額分は、少なくとも債権者に返済しなければならないとされています(清算価値保障原則と言います。)。
原則として、債務者の有する現金、預貯金、保険の解約返戻金、退職金、自動車、不動産などが資産に含まれます。
(住宅ローンが残っている場合には、不動産の価値から住宅ローンの残額を差し引いた金額が資産となります。)
そのため、債務者に持ち家があり、アンダーローン(不動産の売却査定額が住宅ローンの残債務を上回っていること)場合、多額の退職金が見込まれる場合などには、清算価値基準による返済となる可能性が高いです。
ハードシップ免責

ハードシップ免責が認められるためには以下の4つの要件を満たす必要があります。
再生債務者が、その責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となったこと
再生債務者が、その責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となったことが必要です。
例えば、再生債務者が、病気にかかってしまい入院が必要となってしまったような場合や、勤めていた会社が倒産してしまい失業してしまった場合等がこの要件を満たす可能性があります。
再生計画における各債権につき、その各4分の3以上の額の弁済を終えていること
再生計画における各債権につき、その各4分の3以上の額の弁済を終えていることが必要です。再生計画に従った返済がまだ少ししかなされていない段階でハードシップ免責を認めることは再生債権者が過大な不利益を被ることになってしまうからです。
免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと
免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないことが必要です。つまり、清算価値保障の原則(再生債務者は、債務者の所有財産の総額に相当する金額は最低限個人再生で返済しなければならないという原則)に反する場合にはハードシップ免責は認められません。
再生計画の変更をすることが極めて困難であること
再生計画の変更をすることが極めて困難であることが必要です。すなわち一時的に家計が悪化しただけでは認められないということです。病気等の影響で働くことができない期間が長期間続くことが見込まれる場合、会社の倒産等で依然と同等の給料を得ることができる仕事に就くことが難しい場合である必要があります。
ハードシップ免責における注意点

ハードシップ免責の申立てを検討する際に以下の注意点があります。
自宅を失う可能性がある
再生計画で住宅資金特別条項が定められている場合にハードシップ免責が認められると、住宅ローンも含めた全ての債務の返済義務が免除されます。
もっとも、ハードシップ免責の効力は担保権には及びません。そのため、住宅ローン債権者は、その住宅を競売にかけ、その売却代金から残債務を回収することが可能となります。
免責後7年間自己破産等をできなくなる可能性がある
過去7年以内に免責を受けたことは、破産法上の免責不許可事由に当たります。そのため、ハードシップ免責の決定の確定した日から7年間は原則として自己破産をすることはできなくなります。
まとめ

- 個人再生は、再生計画案に従って、圧縮した債務を、原則3年の間分割して支払えば、その余の債務の返済が免除される手続きである。
- ハードシップ免責とは、再生計画に従い誠実に返済を続けていた再生債務者が不測の事態によって返済することが困難となってしまったとき、一定の要件を満たした場合に限り、例外的に免責を認める制度である。
- 自宅に抵当権がついている場合、ハードシップ免責によって自宅を失う場合がある。
- ハードシップ免責後7年間は自己破産をすることができなくなる。
- 債務の返済で苦しんでいる方は、まずは弁護士に相談を。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。
この記事を書いた弁護士:弁護士 椎名慧
債務整理
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和7年登録後、自己破産、個人再生、任意整理など多数の債務整理案件に対応。丁寧なヒアリングによって依頼者に最も適した手続を選択する。債務整理の依頼者が抱える心理的な負担を最小限に抑え、一日も早く平穏な生活を取り戻せるよう、親身かつスピーディーな法的支援に注力している。









