自己破産をする場合、持ち家は手放さなければならなくなる可能性が高いです。家を手放すことを回避するために、個人再生手続等の破産以外の手続きを選択すべき場合も考えられますので、今回は破産と家の問題について解説をいたします。

家は自由財産に該当しない可能性が高い

破産をしますと。破産手続開始決定時における破産者の財産のうち、自由財産と言われる一定の財産は手元に残すことができますが、それ以外の財産については価値のあるものであれば破産管財人において換価を行い、場合によっては債権者への配当に充てます。

そして、例えば、さいたま地方裁判所の運用においては、以下の財産については自由財産とし、換価をしないことにしています。
① 99万円に満つるまでの現金
② 残高が20万円以下の預貯金
③ 見込額が20万円以下の保険契約解約返戻金
④ 処分見込額が20万円以下の自動車等
⑤ 居住用家屋の敷金債権
⑥ 電話加入権
⑦ 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下である退職金債権※
⑧ 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7※

しかし、家はこれらの財産には該当しませんので、自由財産として手放さなくて良いと判断される可能性が少ないのです。

住宅ローンを返済中の家は抵当権者が競売の申立てをすることができる

破産をする場合、住宅ローンの返済はできなくなります。そして、住宅ローンを返済中の場合は、家に抵当権がついており、返済が滞った場合は、住宅ローンを貸し付けている金融機関等の抵当権者が、家の競売を申し立てることができます。

この場合、競売の後に、家の所有権は買受人に移転しますから、家は手放さなければならなくなります。なお、競売では不動産は高く売れませんので、実際のところは、住宅ローンの返済が滞った場合は、住宅ローン貸付金融機関の許可を得たうえで、不動産仲介業者を利用した任意売却を行い、住宅ローンを少しでも多く返済できるようにすることが多いです。

破産者が他の人と家を共有している場合であっても、家を手放さなければならなくなる可能性がある

破産者が他の人と家を共有している場合、破産管財人が共有持分の買取を希望する人がいないかを探し、売却を試みます。買い手が見つからない場合であっても、破産管財人が競売の申立てをすることもありえ、買い手が現れれば、共有持分は買受人に移転することになります。

共有持分を手に入れた人は、他の共有者に対して、いつでも共有物の分割を請求でき(民法256条1項)、共有者間で協議が調わないときは、共有物分割請求訴訟を提起することができます。

共有物分割請求訴訟を行った場合、裁判所は、一定の場合には共有物の競売を命じることができます(民法258条2項)。その場合には持ち家は売却され、その売却代金を持分に従い、各共有者で分けることになります。

そのため、破産者が家の共有持分を有している場合、結果として、破産者及びその共有者の人は家を手放さなければならなくなる可能性があります。

住宅を手放さない方法として個人再生手続がある。

住宅を手放さない方法として個人再生手続があります。破産とは違い、負債の一部については返済を行う手続きです。

返済すべき金額ですが、
・負債の金額が100万円以下の場合は負債の全額を
・100万円を超えて500万円以下の場合は100万円を
・500万円を超えて1500万円以下の場合は負債額の2割を
・1500万円を超えて3000万円以下の場合は300万円を
・3000万円を超えて5000万円以下の場合は負債額の1割を
返済するということがありえ、場合によっては、自分が持っている財産の金額と同等の金額を返済することもあります。

住宅ローンを返済中の場合は、住宅ローンはこれらの返済金額とは別に支払っていきます。このような支払いをすることによって、家を手放さなくてもよくなる可能性がありますので、家を持っている人が債務整理をする場合には検討が必要です。

家の名義変更をすることは要注意

破産をする際に、家を手放さないで済むように、家の名義変更をすることを考える方もおられるかと思いますが、後になって、破産管財人が名義変更を取り消す可能性がありますので(否認権の行使と言います)、注意が必要です。仮に相当な対価で、第三者が家を購入したような場合であっても、その対価である現金が隠匿されてしまう危険があれば、否認権の行使の対象となり得ますので、注意が必要です。

まとめ

以上の通り、ご案内をしましたが、破産をする場合は原則として家は手放す方向に進むことが多いため、個人再生手続等の手続きを検討して頂くのがよろしいかと考えます。その場合は、手続きに精通した弁護士にご相談を頂きたいと思います。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉
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