住宅資金貸付条項(住宅ローン特則)が使える債務の範囲について

個人再生においては、一定の債務については住宅資金貸付債権に関する特則を認め、債務者に所有不動産の維持・確保を図りつつ、経済的再生を図ることが可能になっています。住宅を維持できる可能性があるという意味で、破産とは大きく異なる、個人再生ならではのメリットといえます。

そこで、今回は具体的にこの住宅ローン特則が利用できる「住宅資金貸付債権」に入るのか否かが一見して不明確なものについて、触れたいと思います。

まず、この「住宅資金貸付債権」という文言から、それが「請負代金債権」だった場合には使えないのか、という疑義が生じます。

形式的には、「貸付」ではない以上、住宅建築請負契約の「代金」は入らないようにも思えますが、実質的にはそれらはいずれも「住宅建設の対価」であって、請負代金と建設資金の貸付けと異なるところはありません。
ただ、法律上は分割払いである必要はありますので、請負契約の中に、その請負代金が「分割払い」の約定があることが前提となります。

次に、住宅ローンそのものではなく、これに付随して購入時に必要な仲介手数料・登記費用・税金等の諸費用につきローンを組んで抵当権を設定した場合です。法律上は「住宅の建設若しくは購入に必要な資金」が対象であるとされており、形式的には仲介手数料などは含まれないようにも思えます。

しかし、仲介手数料などは住宅の購入に無関係とまではいえず、額としても住宅ローンそのものと比べれば低額な場合が多いでしょう。
そこで、住宅ローンそのものではないものの、仲介手数料などのために諸費用についてもローンが組まれ、抵当権がついていたとしても、額が僅少であれば、住宅ローン特則の対象となる可能性があります。