事案の概要

従前から浪費やギャンブルにより借りては返しての生活をしていたが、東日本大震災の影響で勤務先の経営が悪化し給与体系が変わるなどしたことでこれまで通りの返済をすることが難しくなった、リボ払いの利用や新しくカードを作るなどして対応してきたがそれも限度額の関係で難しくなったとして小規模個人再生手続の申立てがなされた事案でした。

申立時に提出された家計簿の正確性が疑問視されたこと、家計収支が赤字となっていたこと等の事情から履行可能性のチェックを主たる目的として再生委員に選任されました。

主な業務の内容

再生手続開始意見書の作成に先立ち、本人と面談を行いました。

家計簿は正確に記載する必要があること、赤字の状態では履行可能性を肯定することは難しいこと等を説明したところ、今後は家計簿を漏れなく記載すること、赤字は一時的なものであり現在は改善していること等の回答がありました。

実際にその後の家計簿を確認したところ、記載が修正され、月々の余剰が生じる家計状況となっていたため、将来的な履行可能性が肯定できるとして再生手続開始の意見書を作成しました。

以降は余剰のある家計状態が継続し、勤務先の経営状況にも問題はないと判断されたため、再生計画案の作成、再生計画の認可までスムーズに進みました。

本事例に学ぶこと

個人再生手続を申し立てるにあたっては家計簿の提出が求められますが、裁判所はそこに記載されている家計収支が正確か、また、継続的な返済を行うについて問題がないかを確認しており、家計簿の出来が再生委員をつけるか否かの判断要素の一つとなっています。

そのため、申立書に添付する家計簿については正確に漏れなく記載することが重要となります。他の要素に問題がない場合であっても家計簿の記載が不十分であると判断されると履行可能性の有無の判断という趣旨で再生委員が付されることがありますので、その点を意識して対応する必要があります。

弁護士 吉田 竜二