紛争の内容

1 依頼者は、奨学金を得て大学進学し、卒業し、社会人となりましたが、社会人になっても5年くらいはクレジットカードを保有していない方でした。

2 仮想通貨(暗号資産)取引

依頼者は、2019年前ころより、ツイッターで、ビットコインを知り、興味を持ったとのことです。

2019年9月に、Bitbankは、手数料が低額でしたので、口座を開設し、取引を始めました。

最初は、10万円をビットバンク口座に入金し、仮想通貨取引を始めました。

ビットバンクでは、口座に入金した金額で、購入できる仮想通貨の購入額が決まりました。

仮想通貨であるビットコインを購入し、ビットコインを買ったり売ったりしていました。これを1年くらい繰り返していました。2019年の取引回数は1200回程度1223回でしたが、翌2020年には8000回を超える8673回の取引となったそうです。

3 高レバリッジの業者であるBYBITへの乗り換え

2021年、著名なインフルエンサーの方が、YouTubeで「海外でレバリッジをかけて取引しています、BYITでは、日本人も簡単にやれます。」と述べていました。

依頼者は、日本人向けのボーナスポイントキャンペーンがあったことで、お得だなと感じ、ビットバンクから、BYBITに乗り換えました。

依頼者は、2021年、現物で口座保有していた50万円40万円分を、BYBITに移行して取引を始めました。

4 レバレッジ100倍

依頼者が当初利用していた、ビットバンクでは、レバレッジをかけての取引ができなかったとのことです。

しかし、BYBITでは、レバリッジをかけることができました。

手持ち資金で、大きな取引ができることになりました。

ただ、依頼者は、その取引の設定がデフォルトで100倍となっていることをあまり意識せずに、50万円40万円で仮想通貨取引を開始しました。

依頼者は、BYBITの最初の取引で、一瞬にして、載せ替えた50万円40万円を失ってしまったそうです。

依頼者は、この失った50万円40万円を取り戻そうと思い、さらに、他の口座から移したり、自分や現物取引をするために、配偶者から追加の投資資金に充てるからとして30万円20万円をもらい受け、無名な仮想通貨を購入しました。

依頼者は、この仮想通貨が、いつか1000倍にも化けるかもしれないと思っていたそうです。

5 ビットコインの暴落騒動による無価値

ビットコインの暴落騒動があり、保有していた仮想通貨の現物も無価値になってしまったそうです。

しかし、依頼者は、このことを配偶者に打ち明けられませんでした。

6 損失の取戻しのために、さらにのめり込む

依頼者は、この損失を取り返すために、金融機関から数十万円ずつ借入し、BYBITでのレバリッジを変えての取引のめり込みました。

増減を繰り返しながら、金融機関からの借入は500万円を超えるようになったとのことです。

依頼者は、自身の給与から、生活費や返済費を引くと、自身が使用できるお金は残っておらず、友人との付き合いもしばらく断る状況だったとのことです。

7 実父祖父母からの300万円の借入での挽回を図るも、全滅

2023年になると、依頼者は、借入限度額に達し、金融機関からの借り増しもできなくなったとのことです。

依頼者は、利子だけの返済しかできなかったため、実家の父祖父母に相談し、父からは祖父母からは、「お金を用立てたらそのお金をどう使うのか」問われたそうです。

依頼者は、父祖父母に対し、せめて損失を取り戻すために取引を続けることを説明しました。

依頼者は、仮想通貨取引を現物取引と掛けのレバリッジの取引を行い、口座に預けてある日本円を増やして、何とかしようとしました。

しかし、想定通りではない仮想通貨取引相場となり、やはり、全部を失ったそうです。

8 第2子出産後、配偶者が育休をとることになり、妻に打ち明ける

2024年、依頼者の配偶者である妻が第2子出産のために産休育休をとることになりました。

妻の収入は減り、家族の生活費を、依頼者の収入からさらにねん出する必要があります。

依頼者の給与では支払いがあるため、余剰分のお金で家計の維持そのものがかなり厳しいことがわかりました。

依頼者は、妻に大きな借金があることを打ち明けました。

妻は、妻自身の預金から生活費の不足分を出してもらい、家計を維持していきました。

しかし、そのような生活を半年ほど続けましたが、妻の貯金も底をつくようになりました。

依頼者夫婦は、二人の子を育て上げる責任があります。

9 法律相談、自己破産

そこで、依頼者は、複数の法律事務所に相談にも行ったそうです。

相談したすべての弁護士からのアドバイスは、自己破産しかないというものでした。

そこで、当事務所にご依頼いただきました。

交渉・調停・訴訟などの経過

依頼者の仮想通貨取引による多額の負債を負うというのは、破産法当初より、破産管財事件として扱われることを予定しておりました。

破産を申立て、破産手続開始決定を受け、選任された破産管財人と面談し、さらに事情を徴取されました。

破産管財人は、依頼者はが仮想通貨取引にのめり込み、親族からの援助金300万円、配偶者から提供を受けた数十万円を、瞬く間に費消して(溶かして)しまいました。

貸金業者などの金融機関からの借入も、1000万円以上あり、消費者破産としては負債額も大きいものでした。それも短期間で本債務整理に至りました。

貸金業者などの金融機関への利息の支払額も借入金に比して決して多額ではありませんでした。

破産管財人が率直に説明してくれたところによりますと、破産裁判所から、破産者には厳しい態度で臨み、本件事態の深刻さとその責任を痛感するよう指導してもらいたいという指示があったとのことでした。

破産管財人から、依頼者は、改めて仮想通貨取引にのめり込んだこと、損失を取り戻そうとして、さらに負債を増大させたことの悪質性を指摘され、依頼者は、債権者の皆様にはお詫びしかないことを深く痛感しました。

金輪際、そのような取引にのめり込まないように、仮想通貨取引口座もすべて解約しました。

本事例の結末

破産管財人の、免責に対する意見は厳しいものでした。

債務整理相談を経て、弁護士に受任後、また、その後の家計の堅実際の回復、破産者の反省の態度を総合し、管財人は、裁判所の裁量で、支払い義務の免除を許可するのが相当という意見を述べてくださいました。

裁判所も、管財人の意見、そして依頼者破産者の態度も踏まえ、経済的更生のために、免責を許可しました。

本事例に学ぶこと

依頼者の自宅は、配偶者名義の住宅ローンでした。

しかし、妻は、復職前でありましたので、依頼者破産者は配偶者と二人の子この4人の家族の生活を維持するためには、住宅ローンを分担負担せざるを得ず、その他の家計全般を債務者の収入で賄わなければなりませんでした。

負債額が1000万円以上あることから、それが個人再生で2割に圧縮できても、妻の復職後の収入回復がどれくらいになるか未定な状況でしたので、再生計画履行の見込みが立ちませんでした。

破産法における免責不許可事由がありましたが、個人再生手続を選択することはできませんでした。

免責調査型の破産手続を選択しました。

夫である依頼者破産者の破産管財手続き中に、妻は復職し、相応の収入を得ることになり、家族の生活を堅実に営むことが可能にもなりました。

当事務所では、このような依頼者の方の経済的更生を図るための、免責調査型管財事件についての十分な経験を積んでおり、的確なアドバイスができることを自負しております。

相談者、依頼者の方は納得いくまで、疑問点を相談し、また、弁護士にアドバイスに従い、所期の目的を達するよう二人三脚で頑張りましょう。

弁護士 榎本 誉