紛争の内容(ご依頼の状況)
本件は、当事務所の弁護士が、債務者の代理人としてではなく、さいたま地方裁判所から選任された「個人再生委員」として関与した事案です。
再生を申し立てた債務者(申立人)は、生活費の補填や浪費などが原因で、総額約1200万円もの多額の負債を抱えていました。自力での返済は到底不可能な状態でしたが、定職による収入があったため、破産ではなく、借金を大幅に減額して分割返済する「個人再生手続き(小規模個人再生)」を選択し、裁判所に申し立てを行いました。
裁判所は、負債額が大きく、また資産状況や返済能力を慎重に見極める必要があると判断し、当職を個人再生委員に選任しました。
手続の経過(個人再生委員としての活動)
個人再生委員として、裁判所に代わり、中立・公正な立場から以下の業務を遂行しました。
面談調査(履行テストの開始)
選任後、直ちに債務者ご本人及び代理人弁護士と面談を行いました。借入れに至った経緯、現在の家計状況、資産内容を詳細に聴取するとともに、今後の返済が可能かを見極めるための積み立てトレーニング(履行テスト)を開始させ、その指導を行いました。
再生手続開始に関する意見書の提出
面談の結果や提出された資料に基づき、個人再生手続を開始するための法的要件が満たされているか(支払不能のおそれがあるか、将来において継続的に収入を得る見込みがあるか等)を調査し、裁判所に対して「手続を開始して差し支えない」とする意見書を提出しました。
再生計画案の決議・意見聴取に関する意見書の提出
債務者が作成した再生計画案(借金を法的に減額し、原則3年で分割返済する計画)について、その内容が法律に適合しているか、返済の実現可能性があるかを審査しました。また、債権者からの反対意見の有無などを確認し、裁判所へ報告しました。
再生計画認可に関する意見書の提出
約半年にわたる履行テストの結果、債務者が毎月遅滞なく積み立てを行えたこと、家計収支が安定していることを最終確認しました。これらを踏まえ、裁判所に対し「この再生計画を認可とすべきである」とする最終的な意見書を提出しました。
本事例の結末(結果)
当職が提出した各意見書に基づき、裁判所は債務者の再生計画を「認可」する決定を下しました。
これにより、債務者が抱えていた約1200万円の借金は、法律の規定に基づき約5分の1である「250万円」前後まで大幅に圧縮されました。債務者は、この250万円前後を3年間かけて分割返済していくことになり、経済的な破綻を免れ、人生の再スタートを切ることが確定しました。
個人再生委員としての任務を全うし、手続は無事に終結しました。
本事例に学ぶこと(弁護士からのアドバイス)
個人再生手続きにおいて、個人再生委員は指導役のような存在です。
私が再生委員として選任された際、最も重視するのは「正直さ」と「家計管理の正確さ」です。
どんなに借金が多くても、また過去に浪費があったとしても、手続きの中で家計を立て直し、履行テスト(積み立て)を誠実に行えば、再生計画が認可される可能性は十分にあります。
当事務所は、今回のように裁判所から選任される「個人再生委員」としての経験も豊富です。
「裁判所や再生委員がどこを見ているのか」
「どのような計画なら認可されるのか」
という視点を、逆にご依頼者様の代理人となった際の活動にフルに活かすことができます。
多額の借金でお悩みの方は、個人再生手続を個人再生委員の立場からも熟知した当事務所にご相談ください。
弁護士 時田 剛志








