紛争の内容
ご依頼者は、30代の男性会社員でした。仕事のストレスから買い物やゲームにのめり込み、高級腕時計を購入し、クレジットカードの分割払いや消費者金融からのキャッシングを繰り返し、気づけば借金は年収を超える金額にまで膨れ上がっていました。
最初は順調に返済を続けていましたが、やがて自転車操業の状態に陥り、日々の督促の電話に精神的に追い詰められるようになりました。ご自身でインターネットで調べるうちに、「浪費」は破産が認められない「免責不許可事由」にあたると知り、「自分の場合はもう自己破産は無理だ」と絶望的な気持ちで当事務所の無料相談に来られました。
交渉・調停・訴訟等の経過
当職はまず、ご依頼者様が深く反省されているお気持ちと、借金が増えてしまった経緯を丁寧にヒアリングしました。そして、浪費が免責不許可事由に該当する可能性は高いものの、裁判所に正直に事情を説明し、真摯に反省の意を示すことで、裁判官の裁量によって免責が許可される可能性があることをご説明しました。
ご依頼後、当職はご依頼者様とともに家計の状況を見直し、詳細な申立書類を作成しました。予想通り、裁判所は浪費の事実を調査するため「破産管財人」を選任する「管財事件」として手続きを進めることを決定しました。ご依頼者様は大変不安がられていましたが、当職が破産管財人との面談に同席し、受け答えについて事前にアドバイスするなど、全面的にサポートしました。面談では、購入した時計の現在の状況を正直に報告し、ご自身の行為を心から反省している態度を貫きました。
本事例の結末
破産管財人は、ご依頼者様が弁護士の指導のもとで真摯に手続きに協力し、深く反省している点を評価しました。また、家計簿を提出し、給与の範囲で生活ができていることを確認していただきました。その結果、破産管財人から「裁量により免責を許可することが相当である」との意見が裁判所に提出されました。
そして申立てから約半年後、裁判所は無事に「免責許可決定」を下しました。これにより、ご依頼者様は全ての借金の支払義務から解放され再スタートを切ることができました。
本事例に学ぶこと
借金の原因が浪費などの免責不許可事由に該当する場合でも、自己破産を諦める必要はありません。重要なのは、専門家である弁護士に正直にすべてを打ち明け、その指導のもとで裁判所の手続きに誠実に対応することです。
弁護士 申 景秀