紛争の内容
依頼者は30代の男性で、仕事の都合により短期間で複数回の引越しを余儀なくされ、その費用をクレジットカードやキャッシングで賄っていた。

また、生活のストレスからギャンブル(競馬・パチンコ)に手を出すようになり、借金が雪だるま式に膨らんでいった。

最終的に債務総額は約400万円となり、毎月の返済が困難となったため、自己破産を決意して当事務所へ相談された。

交渉・調停・訴訟等の経過
受任後、直ちに受任通知を債権者に送付し、督促を停止させた。財産状況を詳細に確認したところ、不動産や高額資産は保有しておらず、給与所得も平均的なものであった。

ギャンブルによる浪費債務が多くを占めていたため、免責不許可事由に該当する可能性がある点について、本人と十分に協議。誠実な生活改善努力や反省の意思を明確にした上で、管財事件として申立てを行った。

破産管財人による調査・面談ののち、債権者集会が開かれたが、債権者から特段の異議は出されず、免責不許可事由の存在を踏まえた上でも、裁量免責が認められる見通しとなった。

本事例の結末
裁判所は、破産者の反省の態度や、今後の再出発への意思を総合的に考慮し、裁量免責を許可した。これにより、依頼者は約400万円の借金から解放された。

本事例に学ぶこと
本件は、「ギャンブルによる借金」が主因であっても、裁量免責が認められる可能性があることを示した事例です。

自己破産制度の目的は、単に債務を免除することに留まらず、債務者に経済的更生の機会を与えることにありますので、過去の浪費行為があったとしても、誠実な態度や再発防止に向けた努力が認められれば、裁量免責の余地は十分にあります。

ただし、裁量免責が必ず認められるわけではなく、ギャンブルや浪費に関する説明責任を果たすこと、今後の生活態度の改善を具体的に示すことが不可欠です。

弁護士 申 景秀