紛争の内容
ご相談者様は、投資に興味を持たれていたところ、不動産の営業マンから、一人暮らし向けマンションの投資の勧誘を受け、地方にワンルームマンションを2部屋購入されました。

また、過去にFXなどをしていた経験から、最近では仮想通貨にも手を出されていました。

もっとも、ご相談者様によれば、不動産の営業マンから聞いていたような利益が出なかったこと、及び、仮想通貨の価値が大幅に下落したことから、気付いたときには、多額の債務だけが残ってしまったということでした。

ご相談者様としては、返済が困難であることから、自己破産をされることを決意されたため、この度、当職らがご依頼を受ける運びとなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
投資目的での不動産購入及び仮想通貨の購入という免責不許可事由があったことから、本件は管財人弁護士が選任される異時廃止事件となりました。

そのうえで、自己破産の手続きの中では、上記の不動産(ワンルームマンション)の処理をどうするかが問題となりました。通常、破産者が不動産を有している場合には、裁判所より選任される管財人において、抵当権者の協力を得て任意売却を目指すことになります。

本件でも、不動産を何とか売却するため、債権者集会の期日が複数回開かれ、その間、管財人において抵当権を有する債権者(別除権者)に何度も働きかけたものの、売却価格でなかな折り合わない(別除権者の協力を得ることが難しい)ということで、任意売却ができない状況が続きました。

本事例の結末
結局、ワンルームマンションのうち、1部屋は大幅なオーバーローン状態で換価困難であることを理由に、もう一部屋は、別除権者との方針の齟齬が顕著であり換価困難であることを理由に、いずれも期日にて、破産財団から放棄されることとなりました。なお、放棄された不動産は、通常、抵当権が実行され、競売に掛けられることとなります。

また、不動産や仮想通貨購入などの投資行為が債務を膨らませる原因になったことについては、債務者(ご相談者様)において真摯に反省したうえで、家計を立て直した結果、無事に免責が許可されました。

本事例に学ぶこと
本件では、FXや仮想通貨などへの投資(ギャンブル)という免責不許可事由(法律により、原則として破産を認めないとされている事由)があり、かつ、不動産(ワンルームマンション)を所有していたという複雑な事案であったものの、申立代理人である当職らと管財人弁護士が連携を取り合うことにより、無事、裁判所に自己破産を認めてもらうことができました。

自己破産を裁判所に認めてもらうためには、申立代理人となる弁護士の力量も必要となりますので、借金の返済が困難で、自己破産を検討されている方は、債務整理に精通した弁護士に相談されることをお勧めいたします。

弁護士 田中 智美
弁護士 渡邉 千晃