破産しようとする時に、「去年亡くなった父親の遺産分割がまだ済んでおらず、母親、兄弟姉妹との話し合いが続いている最中なんですが・・・」という場合があると思います。
このような未分割の遺産がある場合、破産手続ではどのように扱われるのでしょうか。

まず、遺産分割が済んでいない遺産も、破産手続上は、破産者の財産として裁判所に申告・報告しなければなりません。
遺産に対して潜在的な持分(法定相続分)があると考えられるからです。

そのうえで、今後の遺産分割協議には、裁判所から選任される管財人が加わって話し合いを進めていくことになります。
破産開始決定が出されると、破産者の財産に関する管理処分権が破産者から管財人に移行するので、以後、遺産分割協議に参加できるのは管財人のみで、破産者本人は当事者になることはできません。
遺産分割協議が調うと、管財人は、破産者の分として取得した財産を換価し、破産財団に組み入れます。

ただ、これまで親族一同で話し合っていたところに、突然、見ず知らずの第三者が入ってくるわけですから、新たに管財人が入っての遺産分割協議がスムーズにまとまるとは限りません。

管財人としてはできるかぎり協議をまとめるよう努力しますが、協議の成立が見込めない場合には、相続分相当額を破産財団に組み入れさせたうえで(または、他の相続人に破産者の相続分を買ってもらう等したうえで)、破産財団から放棄することになるでしょう。