破産の準備中に、給与や預貯金等が差し押さえられた場合の対応について

弁護士に破産手続の依頼をし、弁護士から各債権者に受任通知を発送すると、債権者から債務者の方へ直接の取立や連絡が止まります。

しかし、債務者の方に対し弁済を求めて訴訟を提起したり、既にある債務名義(判決など)に基づいて差押をされることは禁止されておりません。

破産の開始決定前について

破産の開始決定前について

破産の開始決定があれば、差押や進行中の訴訟がストップしますが、問題となるのはその開始決定が出されるまでになされる差押についてです。

そこで今回は、「もし破産の準備中に給与や預貯金などの財産が差し押さえられてしまったらどうした良いか」ということについて説明します。

給与や預貯金などの財産が差し押さえられてしまった場合、差押命令を受領してから一定期間経過後、債権者は差押を受けた第三債務者(勤務先や預貯金の預け先)に対し、直接取立をすることが出来るようになります。

この差押によって、ご自身の生活が成り立たなくなってしまうという場合には、「差押え範囲の変更」という、裁判所に差押え命令の全部または一部を取り消してもらうための申立てがあります。

この申立てを受けた裁判所は、ご自身や債権者から資料を提出してもらい、審理を経て、「差押命令の(一部)取消し」または「申立て却下」という結論を出します。

なお、この「差押命令の(一部)取消」が認められたとしても、債務そのものがなくなったり、減ったりするわけではありませんので、その点はご留意ください。

破産の開始決定後について

破産の開始決定後について

破産の開始決定後の給与等の差押えについては、次のとおりとなります。

管財事件と同時廃止事件の振り分け

管財事件と同時廃止事件の振り分け

まず、自己破産を申し立てると、「管財事件」、又は、「同時廃止事件」のいずれかに振り分けられます。

「管財事件」とは、簡単に言うと、破産者に財産があり、債権者への配当が見込まれるなど、債権額の調査や破産者の財産の換価、配当を行う必要がある場合に、「管財人」(中立的な弁護士)が選任される事件をいいます。

他方、「同時廃止事件」とは、破産者に換価する財産がないことが明らかな場合に、債権額の調査や換価が省略され(管財人が選任されず)、破産の開始決定と破産手続の廃止決定が同時に出される事件を言います。

管財事件の場合

管財事件の場合

自己破産の申し立てをし、裁判所が破産手続の開始決定を行うと、すでに開始されている強制執行手続は、効力を失います(破産法第42条1項)。

したがって、裁判所による破産の開始決定がなされると、債権者は、給与等の差押えを行うことができないこととなります。

実務上は、破産管財人が、強制執行を許可した裁判所に対し、破産の開始決定が出たことを上申することによって(あるいは、債権執行取消しを上申することによって)、給与の差押えが止まることになります。

同時廃止の場合

同時廃止の場合

同時廃止決定がなされた場合には、その後に免責決定(残債務の支払を免除とすることを裁判所が認める決定)が確定するまでの間、すでにされている強制執行は中止するとされています(破産法第249条1項)。

また、免責決定が確定すると、強制執行はその効力を失うとされています(同条2項)。

したがって、同時廃止決定後に、強制執行を許可した裁判所に対し、同時廃止決定が出たことを上申することで、給与の差押えが中止され、その後、免責決定を受けることで、給与の差押えは効力を失います。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 渡邉 千晃
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