破産と信用情報

多重債務の相談者から、破産手続をとると、ブラックリストにいつまで乗っていますか、どれくらいたてば、クレジットカードが持てますかと質問されることがあります。また、当事務所で過去に破産手続をとり、免責の許可決定を受けて数年後に経済的に立ち直り、預金もできた依頼者の方から、いつになったら、クレジットカードを保有できるのか、住宅ローンを組むのに支障はないでしょうか等問い合わせがあります。
そこで、まとめてみました。

信用情報とは
個人の信用取引に関する過去から現在までの取引事実を客観的に表した情報をいいます。信用情報には、①申込情報(クレジットやローンの新規申し込みにおける支払い能力を調査するため、信用情報機関加盟会員各社が紹介した事実を表す情報)、②クレジット情報(信用情報機関加盟会員各社と締結した契約の内容は支払い状況を表す情報)、③利用記録(クレジットやローンの利用途上における支払い能力を調査するなどのため、加盟会員が照会した事実を表す記録)があります。

信用情報機関
CIC,JICCそして全銀協があります。
この三社のホームページを確認しました。

官報情報の収集・保有をしている機関
自己破産手続をとったという、債務者の自己破産の登録情報は、破産手続開始決定がなされると官報公告されます。この官報情報の収集・保有をしているのは、全銀協のみです。
CICは、平成21年4月1日以降、官報に公告された内容を表す情報である官報情報を収集・保有していないと宣明しています。
しかし、CICは、その加盟会員から登録される信用情報として、加盟会員と締結した契約の内容や支払い状況を表す情報であるクレジット情報に、お支払い状況に関する情報として、「異動(延滞・保証履行・破産)の有無」とありますので、信用情報機関自らが自己破産の情報を収集しないとしても、同情報を保有することになります。
JICCは、「債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等」と例を挙げた取引事実に関する情報として、契約日が2019年9月30日以前の場合は、当該事実の発生から5年を超えない期間、2019年10月1日以降は、契約継続中及び契約終了後5年以内は保有するとしています。

保有期間
債務者が自己破産したという破産情報は、全銀協であれば、官報情報を収集していますが、全銀協のホームページによると、破産手続開始決定などを受けた日から10年を超えない期間としています。
CICは、「契約継続中および契約終了後5年以内」、JICCは、上記のとおり、2019年9月30日以前の契約であれば、当該事実(破産手続開始決定)から5年を超えない期間、2019年10月1日以降の契約であれば、契約継続中及び契約終了後5年以内保有しているということになります。

保有期間の起算点
全銀協は、破産手続開始決定日が官報公告から明らかですので、同決定日となります。
CICは、自ら官報情報を収集していませんので、起算点がいつになるかという点については、同じく同社のホームページによりますと、破産の場合には免責許可決定が確認できた会員会社からのコメントが登録された報告日が起算日となるとのことです。
JICCは、同じく同社のホームページによりますと、登録会社が債務者の免責確定の事実を確認すると、その債権について免責確定の日付でJICCに「完済」の登録を行います。この「完済」の情報は、返済状況に関する情報に該当し、上記のJICC における契約日の基準で、5年を超えない期間ないし5年以内となります。
CICもJICCも自ら官報情報を取得していませんし、また、裁判所は債権者である信販会社などに免責の通知をしませんので、信用情報加盟金融機関は、破産者の免責許可の情報威を更新できません。そこで、免責の許可を受けた債務者の方は、その確定証明書を得て、登録しているクレジット会社などに申告し、対応を求めることになります。

自己破産の情報の抹消
債務者が自己破産し、免責許可を受け、同許可決定が確定し、CIⅭないしJICCの各加盟会員各社が信用情報に登録してから5年を経過すると抹消されます。
しかし、全銀協は、免責許可決定確定(その登録)から5年では、官報情報の破産手続開始決定ないし免責許可決定から10年を経過していないため、抹消されません。

CRIN(Credit Information Network)による信用情報交流
CIC,JICC及び全国銀行個人信用情報センター(全銀協)は、それぞれが保有する信用情報のうち、延滞に関する情報及び各信用情報機関に本人が申告した本人の確認書類の紛失盗難に関する情報を交流しています。消費者への過剰貸付の防止、多重債務者の発生防止のより一層の効果を上げるためとします。
これは、契約者(申込者)の支払い能力に関する調査のためであり、この信用情報を利用するにあたっては、本人の同意を得た上で利用しているとのことです。
本人の同意を得て、情報交流をする内容には、本人識別情報以外に、支払状況に関する情報、例えば、異動発生日・情報の種類(異動)・終了状況(完了・貸倒など)とされています。
この情報交流のシステムを利用すると、例えば、破産手続開始決定を受け、免責許可が確定して5年以上経過していても、10年を超えていない場合には、全銀協の登録情報については、破産手続開始を受けて10年を経過していないことが判明することになりえます。
その上で、新たな融資(例えば、住宅ローン融資、新規事業の融資など)の与信判断がなされることになります。

なお、以上は、2021年2月1日現在の、各信用情報機関のホームページを参照しました。