被相続人の遺産分割未了の状況で、法定相続人の一人が破産した場合の遺産不動産の処理方法について

多額の負債を抱えた方が、被相続人の遺産分割未了の状況で、経済的な再出発のために、破産手続の申立てがなされ、破産手続開始決定がなされるとともに、破産管財人が選任されました。
この遺産の中には、土地建物がある場合の処理について考えます。

管財人は、遺産分割協議が行われていない場合には、破産者の管理処分権を有することになりますので、共同相続人の管理処分権を承継した者として、他の共同相続人に遺産分割協議を求めることがあります。

早期に成立する見込みがあれば、その遺産分割を整えることになります。
その多くは代償金を取得する方法により、破産財団の充実を図ることになります。

破産手続開始決定がなされる前に、破産者以外の共同相続人が当該遺産不動産を取得するという遺産分割協議がなされましたが、その内容での相続登記がなされない場合、破産手続開始決定がなされた場合が問題です。

破産管財人は、破産者の管理処分権を承継しますが、破産管財人は、遺産不動産を取得した相続人に対しては、民法177条の第三者にあたりますので、相続登記をしていない場合には、破産管財人に遺産不動産の取得を対抗できません。

破産管財人としては、破産手続きの迅速性の観点から、他の相続人に不動産を取得してもらい、管財人が金銭を得るという方針で、遺産分割協議、相続分譲渡が行えれば望ましいと考えることになります。

ところで、当該遺産不動産における破産者の共有持分について、自由財産拡張の制度によって、裁判所の許可を受けて、破産者の自由財産とすることは可能でしょうか。

さいたま地裁発行の破産管財人の手引き中の、自由財産拡張基準を確認し、さいたま地裁に改めて確認しましたところ、遺産不動産(共有持ち分)については、次の対応となるとのことでした。

(1) 自由財産拡張の対象とならないとのことです。

(2) 遺産不動産の評価後、破産者の共同相続人らの理解・協力を得て、破産財団への組入れ額の協議をしてもらい、財団への組入れの可否、組入れの実現の現実的可能性の有無を判断します。

(3) 仮に、破産者の親族などの協力による、財団組入れが不可能な場合、他の共有者(共同相続人)らと共同の売却(任意売却)の可能性を検討することになります。

(4) 他の相続人の協力を得られれば、任意売却を実現することになります。

(5) しかし、その可能性がない場合、手続き進行との調整により、破産者の新得財産から一定額を組入れしてもらい、当該破産財団からの放棄許可を検討することになります。