会社が破産する場合、取締役兼従業員はどうなりますか

破産法では、従業員すなわち労働者を「使用人」と定義し、「使用人」の破産開始決定日の前3か月間の未払給料については、財団債権(破産法149条1項)として優先的に支払いを受けることができるとしていますが、役員の未払報酬は、一般破産債権として、通常の配当を受けるにすぎません。

このように、取締役としてのみ扱われるか、従業員の立場を有しているかで扱いが異なるため、「使用人」つまり従業員に当たるか否かが重要になりますが、「使用人」は、労務を提供して対価を受け取ることで生活を営んでいるかどうかによって判断され、パート・アルバイトといった名称や雇用・請負・委託等の形式的な契約形態にこだわらず、実態に着目して判断されることになります。

従って、「取締役兼従業員」も、実態に着目して判断されることになります。裁判例には、取締役兼従業員が、取締役としての実質的活動を行ったことがなく、専ら代表取締役が決定しており、単なる従業員として職務に従事していた事案で、取締役としての地位が全く名目的・形式的なものにすぎないとして、その取締役兼従業員の受領していた金員を全額「給料」として認めたものがあります(東京地判平成3年12月17日)。