紛争の内容
20年以上前に破産をしたことがあり、約380万円の負債を作ってしまったという理由で、もう一度破産の申立てをした人について、破産管財人として免責調査を行うように裁判所から依頼を受けました。また、この方は、債権者から勤務先の給与の差押えを受けていましたので、管財人として差押えの停止の手続きを取るように依頼されました。

交渉・調停・訴訟等の経過
まず、管財人として、給与の差押えをしている裁判所に対して、差押えを終了するように上申をして、差押えが終了しました。勤務先が法務局に差し押さえられた給与を供託していましたので、この給与を取り戻し、債務者に返還しました。また、債務者と面談をしましたところ、母親が高齢と病気のために入所していた施設の費用を支払っていたこと、及び、自身の小遣いだけでは足りないので、借り入れをして、競馬、タバコ代、酒代で月に2万円を超えるか超えないかの金額を使用していたという説明がありました。

さらに、資格商売のようなセミナーを受講して、インターネットを使用した副業を行う方法を学ぶために85万円の費用を支払ったが、詐欺であることが分かったことや、令和5年の冬頃から約半年間、月額20万円を超えて、競馬にお金を賭けたことの説明がありました。

管財人としては、過去に破産を経験しているにも関わらず、自身の収入に見合わない施設の費用の支出、自己投資、及び、ギャンブル等を行うために多額の借り入れを行って、返済不能に陥っていたため、破産法の免責不許可事由に該当するという意見を提出しました。

他方、債権者からは債務者の免責に反対する意見は提出されず、また、債務者の家計簿を見ますと、手元に現金や預金を残すような生活を送っているため、再び負債を形成する可能性は一定程度減少していると判断できましたので、債務者が経済的な再出発をする必要性を鑑みて、破産法による裁量免責を認めるのが相当であるという意見を提出しました。

本事例の結末
裁判所は債務者の裁量免責を認めました。

本事例に学ぶこと
債権者が差し押さえた給与は、破産管財人が差押えの終了の上申をして取り戻すことができますので、これを実践しました。免責調査については、2回目の破産であっても、その負債の金額、負債の形成原因、現在の生活状況、債権者の意見を考慮して、裁量免責を認めることができますので、これを実践しました。

弁護士 村本 拓哉