自己破産とは?利用できる条件・手続の流れ・生活への影響を弁護士が解説します

※本記事は、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士が執筆しています。

皆様、こんにちは。グリーンリーフ法律事務所の弁護士です。カードローンやクレジットカードの返済が重なり、毎月の収入だけでは支払いを続けられなくなったとき、「自己破産を考えた方がよいのか」「借金がいくらあれば破産できるのか」と悩む方は少なくありません。自己破産は、返済できない状態に陥った人が、裁判所の手続を通じて生活を立て直すための制度です。

もっとも、申立てをしただけで直ちに全ての借金がなくなるわけではありません。財産を清算する破産手続と、残った債務の支払義務を免除する免責手続は、法律上は別の手続です。また、税金や養育費など、免責されない債務もあります。本コラムでは、自己破産の基本、利用できる条件、手続の流れ、財産や仕事への影響、相談前に準備すべきことまで、初めて検討する方に向けて説明します。

自己破産は生活を再建するための法的手続です

自己破産は生活を再建するための法的手続です

自己破産は、債務者が支払不能にあるときに、裁判所が破産手続を開始し、換価すべき財産があれば破産管財人が売却して債権者へ公平に配当する手続です。個人の場合は、これと並行して免責許可を申し立て、裁判所から免責許可決定を得ることで、原則として破産手続による配当後に残った債務の支払義務が免除されます。

したがって、「自己破産=借金を踏み倒す制度」という理解は正確ではありません。債務者は財産、収入、借入経緯、家計の状況を正直に申告し、裁判所や破産管財人の調査に協力します。そのうえで、債権者間の公平を確保しながら、経済生活を再スタートさせることが制度の目的です。返済のために新たな借入れを繰り返し、生活費まで不足している場合には、早い段階で法的整理を検討することが重要です。

借金額だけで利用できるかどうかは決まりません

自己破産を利用できるかは、「借金が何百万円以上あるか」という一律の金額で決まるものではありません。破産法上の中心的な要件は支払不能であり、一般的かつ継続的に債務を支払うことができない状態かどうかが問題になります。同じ300万円の借金でも、十分な収入と財産がある人と、収入が少なく扶養家族がいる人とでは、返済可能性の判断が異なります。

判断に当たっては、毎月の手取り収入、家賃や生活費、扶養家族、保有財産、債務総額、金利、返済期間、病気や失業の有無などを総合的に見ます。現在は返済日に間に合っていても、他社から借りて返済している状態であれば、実質的には支払いが破綻していることがあります。反対に、家計を見直せば分割返済が可能な場合には、任意整理や個人再生の方が適することもあります。

破産手続と免責手続は別の役割を持ちます

破産手続は、債務者の財産を調査し、換価できる財産を債権者に配当するための手続です。免責手続は、誠実に手続へ協力した債務者について、残った債務の支払義務を免除するかを判断する手続です。裁判所の案内でも、破産手続開始決定を受けただけでは債務の支払義務はなくならず、免責許可決定の確定が必要であることが説明されています。

個人の自己破産では、通常、破産と免責を同時に申し立てます。しかし、財産隠し、虚偽の説明、著しい浪費、特定の債権者だけへの不公平な返済などがあると、免責不許可事由が問題になります。実際には事情を調査したうえで裁量免責が認められることもありますが、最初から事実を隠すことは最も避けるべき対応です。

相談から申立てまでの一般的な流れ

相談から申立てまでの一般的な流れ

弁護士へ依頼すると、まず債権者へ受任通知を発送し、取引履歴や残高を取り寄せます。貸金業者や債権回収会社から本人への直接の督促は、受任通知後、通常は止まります。その間に家計を立て直し、申立費用を積み立てながら、通帳、給与明細、課税証明書、保険証券、車検証、不動産資料などを集めます。

申立書では、債権者一覧、財産目録、家計収支、借入れに至った事情などを具体的に説明します。資料の不足や不自然な資金移動があると、追加説明が必要になり、手続が長引くことがあります。申立て直前だけを整えるのではなく、少なくとも過去の通帳や決済履歴をさかのぼって確認し、説明できる状態にしておくことが大切です。

同時廃止と管財事件の二つの進み方

換価して債権者へ配当するほどの財産がなく、破産管財人による調査も特に必要ないと裁判所が判断した場合には、破産手続開始と同時に破産手続を廃止する「同時廃止」となることがあります。一方、一定の財産がある場合、事業を営んでいた場合、免責不許可事由の詳しい調査が必要な場合などには、破産管財人が選任される管財事件となります。

どちらになるかは、単に預金残高だけでは決まりません。保険の解約返戻金、退職金見込額、自動車、不動産、過払い金、相続財産なども確認されます。また、裁判所ごとに運用が異なる部分があるため、「知人は同時廃止だったから自分も同じ」とは限りません。管財事件では、管財人費用に充てる予納金の準備も必要です。

自己破産をすると全ての財産を失うわけではありません

自己破産をすると全ての財産を失うわけではありません

破産手続では、債務者の生活再建に必要な一定の財産まで全て取り上げるわけではありません。差押えが禁止される生活用品や一定の金銭などは自由財産として手元に残ります。実務上は、現金、預金、保険、自動車、退職金見込額などを項目ごとに評価し、裁判所の運用に従って換価対象かを判断します。

ただし、「名義を家族に変えれば残せる」「申立て前に現金化して使えばよい」という対応は危険です。形式上の名義ではなく、実質的に誰の財産かが調査されます。不自然な譲渡や安価な売却は否認の対象となり、免責判断にも悪影響を及ぼす可能性があります。残したい財産がある場合こそ、処分する前に弁護士へ相談してください。

仕事や資格への影響は限定的です

仕事や資格への影響は限定的です

自己破産をしたことだけを理由として、一般の会社員が当然に解雇されるわけではありません。戸籍や住民票に破産の事実が記載されることもありません。もっとも、破産手続開始から復権までの間、警備員、生命保険募集人など、一部の資格や職業に法律上の制限が生じることがあります。該当する仕事に就いている場合は、申立て前に資格法と勤務先の規程を確認する必要があります。

また、勤務先からの借入れがある、給与振込口座の金融機関に借金がある、退職金見込額の資料を勤務先から取得する必要があるなど、個別事情によって勤務先に知られる可能性は変わります。「必ず知られる」「絶対に知られない」と断定するのではなく、どの経路で情報が伝わり得るかを事前に整理することが現実的です。

家族や保証人への影響を分けて考えます

家族であるという理由だけで、本人の借金を配偶者や子が支払う義務はありません。家族名義の財産も、実際に家族自身が取得したものであれば、原則として本人の破産財団には入りません。ただし、本人の収入で購入した財産を家族名義にしていた場合や、直前に多額の送金をしていた場合には、実質的な所有関係が調査されます。

保証人や連帯保証人がいる債務については、本人が免責されても保証人の責任はなくなりません。債権者は保証人へ請求できます。家族が保証人になっている場合には、本人の申立てと同時に、保証人側の返済方法や債務整理も検討する必要があります。保証人への説明を先送りすると、突然の一括請求によって関係が悪化するおそれがあります。

免責されない債務があります

免責許可決定が確定しても、税金、罰金、故意または重大な過失による一定の損害賠償、養育費や婚姻費用などの扶養義務に基づく債務、悪意で債権者名簿に記載しなかった債務などは、法律上、免責の対象外となることがあります。これらは自己破産後も支払方法を調整しなければなりません。

特に税金や社会保険料は、破産をすれば全て解決すると誤解されやすい項目です。滞納処分による差押えが進んでいる場合には、役所との分納協議も並行して行います。どの債務が免責され、どの債務が残るかを一覧にしておくことで、免責後の家計を現実的に設計できます。

自己破産以外の選択肢も比較します

自己破産以外の選択肢も比較します

任意整理は、裁判所を使わずに債権者と返済条件を交渉する手続です。元金を一定期間で返済できる見込みがあれば、財産への影響を抑えながら整理できることがあります。個人再生は、裁判所の手続で債務を一定額まで減額し、原則3年から5年で返済する制度で、住宅ローン特則を利用して自宅を維持できる場合があります。

自己破産は返済原資が不足している場合に有力な手段ですが、どの制度が最適かは、借金額だけではなく、安定収入、自宅、車、保証人、職業、家族構成などによって異なります。名称の印象で決めず、各手続を利用した場合の生活を具体的に比べることが大切です。

相談前に整理しておくとよい資料

相談時には、借入先と残高が分かる明細、督促状、クレジットカード、最近の給与明細、通帳、家計簿、保険証券、車検証、不動産資料、税金の納付書などを可能な範囲で準備します。全てそろっていなくても相談はできますが、毎月いくら不足しているかが分かると、手続選択の精度が上がります。

借入れの理由について、生活費、病気、失業、事業、ギャンブル、投資などを時系列で整理しておくことも有用です。責められることを恐れて事実を省くと、後で通帳や信用情報との食い違いが生じます。弁護士との相談では、不利に思える事情も含めて正直に伝えることが、結果として安全な申立てにつながります。

自己破産を検討するタイミングと相談を急ぐべきサイン

返済日に遅れていない段階でも、毎月の返済額を別の借入れで補っている、リボ払いの残高が減らない、ボーナスを全て返済に充てても元金がほとんど減らない場合には、家計が既に限界に近い可能性があります。延滞してからでなければ弁護士へ相談できないということはありません。むしろ、給与や預金の差押え、家賃滞納、ライフライン停止に至る前の方が、生活を維持しながら準備できます。

特に、病気や退職で収入が恒常的に減った、複数社から限度額まで借りている、税金や社会保険料を滞納している、督促を家族に隠すため新たな借入れをしている場合は、早期に全債務を一覧化してください。相談をしたから必ず自己破産を申し立てなければならないわけではありません。任意整理・個人再生との比較だけでも可能です。

弁護士へ依頼した後は、返済を止める一方で、家計を黒字にする必要があります。携帯料金、保険、サブスクリプション、家賃など固定費を見直し、申立費用と緊急予備費を積み立てます。免責は過去の借金を整理する手続ですが、その後の生活が再び赤字であれば再建は続きません。手続準備の期間を、収入内で暮らす練習期間として活用してください。

さいたま地方裁判所に申し立てる場合の管財事件の流れ

さいたま地方裁判所に申し立てる場合の管財事件の流れ

さいたま地方裁判所は、管財事件について、中間管財(簡易管財)の運用を標準とし、財産状況報告集会、廃止に関する意見聴取、計算報告、個人の免責審尋などを、原則として同じ期日にまとめて実施する運用が示されています。最初の期日は、破産手続開始決定からおおむね2か月から3か月後が目安とされています。事件の内容が単純で換価すべき財産が乏しければ、その期日に破産手続が終了することもあります。

管財事件では、さいたま地裁は資産調査の重要性から、原則として全件で破産者宛ての郵便物を破産管財人へ転送する運用を採っています。管財人は郵便物を開封して財産や債権者に関する情報を確認し、私信は破産者へ返します。また、破産者が転居したり、海外旅行や二泊以上の宿泊を伴う国内旅行をしたりする場合には、管財人と調整した上で裁判所の許可を得る必要があります。

代理人申立ての管財事件における引継予納金は、個人・法人とも原則20万円とされ、夫婦や法人と代表者などの関連事件を同時に申し立てる場合は、関連事件1件につき5万円を加算する標準運用です。ただし、管財業務が相当量見込まれる事件、債権者申立事件などは、負債額や事案の内容に応じてより高額となります。実際の費用は申立時点の裁判所運用を確認する必要があります。

まとめ

まとめ

自己破産は、支払不能となった人が財産関係を清算し、免責によって生活を再建するための制度です。利用の可否は借金額だけでなく、収入、支出、財産、家族状況などを総合して判断します。申立て後の手続は同時廃止と管財事件に分かれ、財産や借入経緯によって必要な準備も異なります。

返済のための借入れが続いている、税金や家賃まで滞納し始めた、督促への対応で仕事や生活に支障が出ているという段階では、問題を先送りしないことが重要です。自己破産だけでなく任意整理や個人再生も比較し、今後の家計を維持できる方法を選んでください。

ご相談

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 申 景秀

債務整理

埼玉弁護士会所属。 獨協大学法科大学院を卒業し、司法試験を70番台という高順位で合格。札幌での司法修習を経て、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所に所属。
債務整理・借金問題案件に精通し、多数の解決実績を重ねている。任意整理、個人再生、自己破産、経営者保証ガイドラインの利用などの手続選択を相談者の状況に応じて分析し、依頼者の不安に寄り添い、経済的再生と平穏な生活を取り戻すため、専門知識を活かした迅速な解決を追求している。