事案の概要
生活費やギャンブル等により相当程度の借入れがあったが何とか返済をしてきた、知人に不動産投資を勧められ土地をローンを組んで購入したが、建物建築費用についてはローンが通らず、それをあてにしていた返済ができなくなり、破産手続申立てを行ったという事案について破産管財人に選任されました。

主な管財業務の内容
破産者は申立前に自動車や不動産の処分をしていたため、処分価格が適正であるかの調査及び免責関係の調査が主たる管財業務の内容となりました。

自動車についてはローン会社により引き上げられた後オークションで売却されていたため売却価格の不透明性はありませんでした。

不動産については代金未払いの状態の建物が完成しており建築費用を受領していない建築会社がその所有権を主張しているという状況下で売却交渉が行われたということでした。

売却に関与した不動産業者によれば最終的には土地のローン会社が了承した数字で売却を実施したということであり、状況を考えれば売却価格に不当性があるとまでは判断できない内容でした。

破産者については継続的なギャンブル、不動産投資の失敗という浪費的な側面が見受けられましたので、その点については免責不許可事由に該当すると判断せざるを得ませんでしたが、現在はギャンブルや投資から離れて生活をしていること、初回の破産手続申立てであること、債権者から特段の意見は出されていないこと等の事情を考慮し裁量免責が相当であるとの意見を提出することにしました。

本事例の結末
自動車及び不動産の売却価格以外の財産関係についてはめぼしいものが存在しなかったため、初回の債権者集会において自由財産拡張等の処理を行い、破産手続は異時廃止となりました。

免責手続については上記のとおり裁量免責相当の意見を述べたところ、裁判所から免責許可決定が下されました。

本事例に学ぶこと
破産手続申立直前の財産処分が存在する場合、破産手続開始後にその売却金額が適正なものかどうかについて疑義が生じる場合があります。

そのため、破産手続申立てを待たずにやむを得ず財産を処分しなければならないという場合には、処分価格が適正なものであることを示す資料(複数社の見積り等)を準備した上で処分を実施することをお勧めいたします。

弁護士 吉田 竜二