紛争の内容(ご相談前の状況)
ご相談に来られた依頼者様は、過去に適応障害を患い、長年勤めた会社を早期退職された方でした。退職後は、退職金や貯蓄を取り崩しながら療養に専念されていました。

しかし、年金の受給が始まるまでの期間に生活が苦しくなり、2年ほど前から年金の受給が始まったものの、同居する家族である猫の病気(急な出費)などが重なり、消費者金融からの借入れが増加してしまいました。

ご自身の収入(パートと年金)だけでは返済が困難となり、自己破産を決意。当事務所にご依頼されました。

交渉・調停・訴訟等の経過(当事務所の対応)

自己破産を裁判所に申し立てたところ、裁判所からいくつかの点について指摘を受けました。最大の争点は、「乗馬」の費用や「宝くじ」の購入が、借金の返済を免除する上で問題となる「浪費」(免責不許可事由)にあたるのではないか、という点でした。

これに対し、当事務所の弁護士は、依頼者様と二人三脚で家計を徹底的に見直し、裁判所に対して以下の点を丁寧に説明する上申書を提出しました。

乗馬クラブの必要性
乗馬は長年の趣味であり、適応障害との闘病中、精神的な健康を保つための「生き甲斐」であったこと。

借金との因果関係
乗馬費用は、当初は給与、退職後は退職金や貯蓄で賄っており、乗馬のために借入れをしたわけではないこと。

質素な生活実態
乗馬費用を捻出するため、食費などを極限まで切り詰めた質素な生活を送っており、生活全体が浪費的だったわけではないこと。

現在の反省と改善
宝くじの購入は少額であり、また破産申立てを機に、生き甲斐であった乗馬クラブもきっぱりと退会し、現在は一切行っていないこと。

弁護士は、依頼者様に対し、時には厳しい助言も行いながら、ご自身の過去の支出と正直に向き合っていただきました。その結果、裁判所は当方の主張を認め、本件は「浪費」には当たらない、または仮に当たるとしても裁量で免責を認めるべき事案であると判断されました。

本事例の結末(結果)
弁護士による丁寧な主張・立証の結果、本件は破産管財人が選任される「管財事件」とはならず、依頼者様の費用負担が最も少ない「同時廃止手続」として進められました。

これにより、依頼者様は管財予納金(最低20万円)を支払う必要がなくなり、裁判所から無事に免責(借金の全額免除)が許可されました。

依頼者様からは、「自己破産、厳しい助言もたくさんありましたが正直に向き合いました。お陰で適切な指導を頂き自己改善することができました。担当弁護士の方がとてもエネルギッシュだったのでいつも元気をもらい前向きで居られたことに感謝します。」と、前向きな再スタートへの感謝の言葉をいただきました。

本事例に学ぶこと(弁護士からのアドバイス)
自己破産の手続きにおいて、趣味や娯楽への支出が「浪費」ではないかと指摘されることは少なくありません。

しかし、その支出がご自身の収入や資産の範囲内で行われていたことや、やむを得ない事情(本件のような闘病中の精神的支えなど)があったことをきちんと説明できれば、免責が認められる可能性は十分にあります。

最も重要なのは、弁護士と共に家計を見直し、裁判所に対して過去の支出を隠さず正直に説明することです。当事務所は、依頼者様がご自身の問題と向き合い、経済的に更生できるよう、熱意をもってサポートします。

弁護士 時田 剛志