事案の概要
生活保護受給中に収入を得ていたがその申告が漏れていたこと等が原因で生活保護が廃止となり、生活費の不足分について借入れを用いるようになった、その後、精神的不調で再度生活保護を受給することとなり、生活保護費から返済を継続することはできないため破産手続の申立てを行ったという事案について破産管財人に選任されました。

主な管財業務の内容
破産者は生活保護受給中であったため、めぼしい財産は存在しませんでしたが、地元に親族から相続した不動産が存在したため、その処理が主たる管財業務となりました。

不動産の状態を確認したところ、宅地であるものの近隣に住宅はなく草木が生い茂っているという状況でした。不動産から比較的近いところで生活をしていた住民に買取りの意向確認を行いましたが、しばらく待っても買取り希望はなかったため、不動産については換価困難との判断に至りました。

本事例の結末
このまま破産手続を継続しても不動産売却の見込みは薄いと考えられたため、初回の債権者集会において不動産については裁判所から放棄の許可をもらい、その他に配当可能な財産は存在しなかったため、破産手続は異時廃止となりました。

今回の破産原因は生活保護廃止中の生活費が主であるとのことでしたので免責手続において免責不許可事由非該当との意見を述べたところ、後日、裁判所から免責許可決定が下され事件終了となりました。

本事例に学ぶこと
生活保護受給中の破産者に係る破産事件について換価可能な財産があることは珍しいのですが、稀に両親などから相続した不動産があるということがあります。

破産管財人として不動産は破産手続の中で可能な限り換価して財団を形成しようとするのですが、引き受け手のない不動産についてはその処理のため徒に破産手続を長期化させるということは望ましくないため、一定期間売却を検討した後に財団から放棄するという方法をとることもあります。

弁護士 吉田 竜二