以前、越谷市で会社をやっていた方が、会社と一緒に破産の申立をしました。
もちろん、管轄はさいたま地裁越谷支部です。
通常の管財事件の場合、会社は20万円、会社代表者は5万円の25万円が管財人への引き継ぎ予納金となります。
この代表者も25万円の予納金の用意をしていました。
申立後に、この会社の敷地内に放置している粗大ゴミが問題になり(申立人会社は廃棄自転車や電気製品を海外に輸出することを生業にしていました)、管財人が粗大ゴミを処分する費用として予納金を700万円用意しなさいと裁判所から言われました。
700万円があったら、破産しなくても営業が続けられていたような小さな会社なんです。
到底700万円の用意ができません。代表者が2カ月かかって必死に粗大ゴミを処分しました。

そもそも、この破産申立時に粗大ゴミを処分していなかったことには理由がありました。
この会社代表者にとっては、裁判官が処分をしなさいといった粗大ゴミは「ゴミ」ではなく「商品」だったからです。
会社は破産することになりましたが個人では、この商売を続けていく予定だったのです。
しかし、泣く泣く代表者は「商品」を処分し、借りていた土地も明け渡しました。これで700万円の予納金は必要なくなりました。

また、この会社には他に回収不能の売掛金が財産としてありました。
売掛先は海外の会社です。
この売掛金については、海外で弁護士も雇い訴訟もしていましたが、売掛先の会社が行方不明となって回収不能になっていました。

裁判所は、この売掛金を回収するために今度は通常の20万円の予納金の他に50万円を用意するよう、言いました。
代表者の予納金5万円と合わせて75万円の予納金です。代表者にはあと50万円の用意ができませんでした。
結局、申立をしてから4ヵ月後にこの破産事件を取下げました。

そして、越谷の裁判所で破産を取り下げたのと同時に、東京地裁に破産申立をしました。
東京では形式的に審理され、予納金は代表者と合わせて20万円でした。
そして、申立から3ヶ月後に会社は異時廃止(何も財産がなかったので簡単に終了すること)、代表者は免責決定を得ることができました。

上記は、たまたまこの事件を担当した、さいたま地裁越谷支部、東京地裁の裁判官の考え方の違いによるものですが、事件を処理するに当たっては、破産申立人の事情を考えて、もう少し、柔軟に対処して欲しいと思った事件でした。