Mさんは、夫、娘2人と夫の両親と暮らしていました。
不動産の名義は夫でした。
家を買う時に、頭金として300万円を夫の両親が出してくれました。
Mさんはパートで働き、家計を助けました。

家を買って数年後、Mさんの夫はリストラにあい、職を失いました。
思うように再就職ができず、銀行から借り入れをして凌ぎました。
生活はギリギリでしたが、子供たちもアルバイトなどをして生計を助けてくれていましたのでなんとか生活ができました。

長女が成人したころ、Mさんの夫が急逝しました。
突然のことで、Mさんは目の前が真っ暗になりました。
夫が亡くなったことで、一家の収入はMさんのパート収入だけになりました。
夫の両親は年金がありましたので、なんとか生活はできていました。

夫の死で住宅ローンはなくなりましたが、住宅ローン以外に銀行からの借り入れが700万円もあることがわかりました。
Mさんはパートを増やし働きましたが、夫の借金の返済をすると生活費が残らないため、Mさんも借金をするようになっていきました。

夫が亡くなって3年が経った頃、Mさんは、夫の両親に家を売却して借金を整理したい、と言いました。

しかし、夫の両親は家を売却することに反対し、お金は頭金を払ったときに使いはたして出せるお金もないと言いました。

結局、Mさんは、夫の両親を残してこの家を出ました。
Mさんの娘たちもそれぞれ就職してこの家を出ました。
不動産の名義はMさんと2人の娘です。
しかし、夫の両親は頭金を出したのは自分たちだからと、住む権利を主張したといいます。

夫の借金の返済に疲れたMさんは、当事務所に破産を依頼されました。
破産をするとすれば、当然夫の両親が住んでいるあの家を処分することになります。
弁護士も任意での売却を試みましたが、夫の両親は頑なに、聞き入れてくれませんでした。
そのため、破産管財事件となり、破産管財人がこの家を売却することになりました。

破産管財人は最終的に、夫の両親にこの家を買ってもらいました。
そして、現在も夫の両親はこの家に住んでいます。
Mさんが自宅を売却したいと言ったとき、両親がお金を出してくれて夫の借金を清算してくれていたら、
Mさん自身が借金を重ねることも、破産することもなかったのかもしれません。

Mさんが家を出たのは、娘から「この家に縛られることはないよ、お母さんはこの家を出て、お母さんの幸せを見つけてほしい」と言われたからでした。
破産が終わった後Mさんは再婚したと報告がありました。
娘が言ってくれた言葉で背中を押され、今の新しい幸せをみつけることができたのだと思い、胸が熱くなったことを覚えています。