当社は、破産手続を弁護士に依頼し、弁護士が各債権者に受任通知を送りました。その後、債権者の1つであるA銀行の当社名義の預金口座に売掛金が入金され、A銀行からの借入金と相殺処理をされてしまいました。
相殺されてもやむを得ないのでしょうか

A銀行が受任通知を受領した後に、破産者の預金口座に振り込まれた売掛金を相殺処理してしまうと、A銀行はたまたま入金された売掛金によって他の債権者に先んじて債権回収を図ることができてしまいます。これでは、破産手続における公平性が害されてしまいます。

破産法は、破産手続をとることを表明した後に、破産者に対して債権を有する者がその破産者に対して反対債務を負った場合には、相殺をすることができない旨が定められています(法71条1項3号)。

質問のケースでは、A銀行は、受任通知の受領後に、預金払戻債務という反対債務を負ったのであり、相殺処理は認められません。
A銀行に対しては、相殺禁止を主張し、入金された売掛金の払戻しを求めることができます。実際には、窓口に赴いて入金されたお金の払い戻しを受けるなどの方法をとって破産会社の財産として、保管をします。